menu

いらない土地の相続の解決策とは|放棄・処分する方法について

公開日:2022年03月04日 カテゴリー:コラム, 相続, 相続放棄 タグ:

「田舎のあの土地、どう扱ったらいいのか分からないよ」

いらない土地を相続で譲り受けることになったものの、どのように処分すれば良いのか迷い、あなたもお困りのはずです。

いらない土地を持ち続けると、次のような4つのデメリットがあります。

  • ①簡単に放棄・処分ができない
  • ②固定資産税がかかる
  • ③管理が大変になる
  • ④周辺住民に迷惑がかかる

それぞれのデメリットについて理解した上で、どうすれば適切な手続きをすることができるのか、詳しく見ていきましょう。

いらない土地を相続して保持しておくデメリット

簡単に放棄・処分ができない

法律には土地を所有するためのルールは定められていても、いらない土地を放棄するためのルールが定められていません。

一方、いらない土地の放棄を禁じた法律もありません。

「いらなければ、国が土地を引き取ってくれるんじゃないの?」

国が土地を引き取るためのハードルはとても高く、希望すれば実現するものではなく複雑な手続きが必要です。

固定資産税がかかる

固定資産税とは、その年の1月1日時点における土地の所有者が納めるべき税金のことをいいます。

固定資産税の計算式は次の通りです。

「課税標準(固定資産税評価額)× 1.4%」

例えば、土地の固定資産税評価額が1000万円なら、その1.4%で「14万円」が固定資産税となります。

固定資産税の平均は、マンションで8~10万円、一戸建てで10~12万円と言われているところ、固定資産税評価額は次の6つの要素で決まります。

  • ①築年数
  • ②構造
  • ③面積
  • ④立地
  • ⑤適用される税率
  • ⑥地下の推移

その他、税金の特例もあるため、あなたの不動産についてあらかじめ調査することが重要です。

管理が大変になる

所有者には土地を適切に管理する義務があります。

草を刈り、ゴミを拾い、周辺に配慮して、所有者の責任を果たさなければなりません。

いらない土地だからといって何もせずに放置しておくことは、大きなリスクを呼び込むことと同じです。

  • 害虫が発生する
  • ゴミが投棄される
  • 火災が発生する

周辺の環境や住民へ被害が及んでしまったら、それこそ問題です。

周辺住民に迷惑がかかる

例えば、

いらない土地に大きな一本の木があり、先日までは剪定もされ管理されていました。

しかし、相続後に管理する人がいなくなり、枝も伸び放題、葉っぱもつき放題で隣の家まで広がっていたとします。

すると、隣の家に日が当たらなくなる、伸びすぎた枝が隣の家人を傷つけてしまう、様々な理由で損害を与えてしまい賠償請求されるリスクが出てしまうでしょう。

いらない土地だからと管理を怠ってしまうと、思わぬところで責任を追及されることになります。

相続前|親の土地がいらない場合は相続放棄する

あなたが相続する前ならば、いらない土地は相続放棄することができます。

相続放棄するメリットを中心に、注意点や相続放棄の手続きについても見ていきましょう。

いらない土地を相続放棄するメリット

いらない土地を相続放棄するメリットは次の2つです。

  • ①固定資産税を納めなくて良い
  • ②経済的負担が減る

それぞれ具体的に見ていきます。

①固定資産税を納めなくて良い

いらない土地を受け継がないので、所有者として支払うべき固定資産税を納める必要もありません。

税金は毎年のことなので、たとえ少額であっても長い目で見れば大きな負担となります。

税金という大きな負担から解放されるのです。

②経済的負担が減る

いらない土地とはいえ、所有者なら管理のため定期的に訪れることが必要です。

車ですぐに行ける場所にあなたが住んでいるなら良いのですが、遠方に住んでいる場合は新幹線や飛行機の交通費がかかります。

土地の近くに親戚がいなければ宿泊することも必要でしょう。

そう考えると、土地の管理には思う以上に費用がかかります。

相続放棄をすると、土地へ行くまでの交通費・宿泊費を考える必要がなくなります。

相続放棄の注意点

「じゃあ、いらない土地なら相続放棄すればいいんだ!」

あなたはそう思うかもしれませんが、話は単純ではありません。

あなたが相続人でなくなったとしても、代わりに管理する人が見つかるまでは管理する義務があります。

代わりの管理人が見つかるまでに何らかの事故などが起こったときは、あなたが責任を取ることになります。

相続放棄をする場合、いらない土地以外の財産も含めすべて放棄しなければなりません。

相続放棄で選り好みはできないので慎重に考えましょう。

相続放棄の流れと必要書類

相続放棄の流れは次の通りです。

  • ①相続放棄の申述書を作成する
  • ②家庭裁判所に必要書類を提出する
  • ③家庭裁判所から受理通知書を受け取る

①で申述書を作成するほかにも手続きに必要な書類があります。

  • A.相続放棄の申述書
  • B.相続放棄する人の戸籍謄本
  • C.被相続人の除籍謄本
  • D.被相続人の住民票の除票

取り寄せるために必要な手数料は地方自治体によって若干異なる場合もあるため、事前に電話やホームページで確認してください。

相続後|いらない土地を相続しても名義変更は必須

「いらない土地だから、名義の書き換えなんて必要ないよ」

その考え方はもう通用しません。

令和3年4月21日、相続登記を義務化する法律ができました。

もし相続登記をせずに放置しておいた場合、最高で10万円の罰金が科されることになります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

相続後|親のいらない土地を処分する方法

「じゃあ、いらない土地はどう処分したらいいのか教えて欲しいよ」

切実な思いを抱えているあなたのためにお伝えすると、処分の方法は主に3つあります。

  • 寄付する
  • 売却する
  • 譲渡する

それぞれ具体的に見ていきます。

寄付する

自治体へ寄付する

いらない土地は、その土地のある自治体へ寄付することができます。

ただし、寄付だからといって自治体がすぐに受け入れてくれるとは限りません。

所有者からの固定資産税は貴重な財源であり、寄付を受け入れることは貴重な財源を失うことと同じだからです。

自治体へ寄付するためには「寄付採納申請」が必要となり、手順は次の通りです。

  • ①担当者へ相談・申請
  • ②土地の調査・審査
  • ③審査に通過すれば寄付完了

担当者へ相談する際には、土地の現状が分かる写真などを持参すると話がスムーズに進むでしょう。

自治体によって審査基準が異なり、必ずしも審査に通るわけではないので注意してください。

法人へ寄付する

法人へ寄付するという手段もあります。

ただし、法人にとって利用する価値があるかどうかが問題になります。

例えば、新しい工場の建設予定地に隣接している、あるいは、保養所など法人の福利厚生施設を建設する予定がある場合は、寄付してもいいかもしれません。

さらに、土地を探している法人を見つけられるかも問題になります。

土地を探している法人があったとしても、その法人に知り合いが勤務しているなど何らかの情報源がないと知ることが難しいからです。

一般の営利企業ではなく、学校やNPO法人などを当たってみると可能性があるかもしれません。

売却する

不動産会社に仲介を依頼する方法

一般的な売却方法として、売却の仲介を不動産会社に依頼します。

「新築を販売するのが得意」「土地売却に自信あり」など不動産会社にも特徴があるので、特徴を見極めた上で仲介を依頼しなければ、いつまでも土地が売れ残ってしまうでしょう。

一定期間が経って売れ残っているならば条件を見直すことも必要となり、最終的には不動産会社を変えることも検討すべきです。

不動産会社に直接買い取ってもらう方法

不動産会社は、不動産の所有者から物件の管理、賃貸・売買の仲介などを依頼され、成果に見合った手数料をもらいます。

一方で、不動産会社自身が「自社物件」を持ち、管理や賃貸・売買をしているケースもあります。

あなたの土地を不動産会社の「自社物件」として買い取ってもらい活用してもらえるなら、双方にとって良い取引となるでしょう。

譲渡する

いらない土地の近隣に譲り受けたい方が見つかれば、譲渡しても良いでしょう。

ただし、譲渡すると相手に贈与税がかかることになります。

譲り受けたい方が見つかったら、どちらがどの程度税金を負担するのか話し合った上で譲渡しましょう。

話し合いをしておかないと、税金の負担を巡ってトラブルになりかねません。

いらない土地を処分する際にかかる費用

いらない土地の処分にも当然に費用がかかります。

①所有権移転登記

所有権が別の人へ移るため土地の名義変更が必要になり、書き替えには次の費用がかかります。

  • 登録免許税
  • 司法書士の報酬

登録免許税は土地の評価額(売買の価格ではありません)により変わり、司法書士への報酬も一定の幅があります。

売却の場合は買主が負担する一方、寄付の場合は決まったルールがないため当事者間で話し合う必要があります。

②法人へ寄付した場合の税金

法人へ寄付した場合は所得税がかかり、譲り受けた法人が負担する場合もあります。

法人への寄付に所得税が課されるのは、法人が土地を取得することで「みなし譲渡所得」とされるからです。

言い換えれば、表面上は土地の寄付であっても、実質的には法人へ土地を売り、売ったことで得たお金をそのまま法人に寄付するものと判断されます。

ただし、法人であっても、社会への貢献を目的とした公益法人などへの寄付については、一定の条件はあるものの非課税となることがあります。

相続前・相続後にいらない土地を処分する際の相談相手

では、いらない土地を処分する場合は誰に相談するのが適切なのでしょうか。

単に法律に詳しいだけではなく、手続きの方法や取るべき手続きの良し悪しについても判断できなければなりません。

司法書士

司法書士は、法律の手続に関する専門家です。

単に法律に詳しいだけではなく、あなたの状況に合わせた適切な手続きを代行することができます。

相続に関する手続きの経験も豊富であり、経験を活かした的確な判断で速やかに手続きを完了できるでしょう。

不動産会社

相続する不動産の処分を考えているなら、不動産会社へ相談することもあるでしょう。

しかし、不動産会社の担当者は、自社の利益になるかどうかを最優先に考えなければならず、法律の手続きに関する専門家でもありません。

相続手続き全体のことを考えると、不動産会社へ相談するのは適切とは言えないでしょう。

税理士

税理士は、税金に関する専門家です。

相続税や贈与税に関する対策を考えることはできても、相続の手続きに関する専門家ではないので、適切な手続きを判断し代行することができません。

相続手続き全体のことを考えると、税理士へ相談するのも適切とは言えません。

弁護士

法律に関する専門家と言えば、真っ先に弁護士を思いつくことでしょう。

争いになっている相手と交渉する、あるいは裁判に訴えて法廷で決着をつける場合なら、弁護士へ相談するのが適切と言えます。

しかし、弁護士といえども実際の相続の手続きになると、司法書士へ依頼するケースがほとんどです。

弁護士に相談しても結局は司法書士に依頼することになるため、相続に関しては最初から司法書士に依頼したほうが効率よく手続きを進められます。

まとめ

いらない土地をどう処分したらいいのか、あなたは頭を悩ませていることでしょう。

寄付・売却・譲渡いずれの方法を取るにしても、相続に関して適切な手続きをしなければ、余計な費用や税金を支払うことになりかねません。

適切な手続きを行うためにも、相続の手続きに関して経験豊富な司法書士に相談しましょう。