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取得条項付株式の取得と、別種株式の発行手続き

公開日:2026年08月19日 カテゴリー:コラム タグ:
スタートアップの資金調達(J-KISSからの転換や優先株式の設計)や、事業承継対策として広く活用される「取得条項付株式」。
会社側が「一定の事由(トリガー)」が発生したことを条件に、株主から強制的に株式を取得できる強力なスキームですが、いざ取得事由が発生した際の実務・登記手続きは非常に複雑です。
本コラムでは、取得条項付株式を取得し、対価として「別種の株式(例:優先株から普通株へ)」を発行(交付)する際の実務の流れと登記のポイントを分かりやすく解説します。

🔎 1. 取得条項付株式とは?今回のスキームの前提
取得条項付株式とは、「一定の事由が生じた日に、会社がその株式を強制的に取得できる」という条件(条項)が付いた種類株式です(会社法108条1項6号)。

弊所応接室

今回は、会社が株式を取得する「対価」として、金銭ではなく「別種の株式(例:普通株式)」を交付するケースを想定します。実務上は「優先株式が、上場(IPO)の承認や一定の期間経過をトリガーとして普通株式に転換される」場面などでよく使われます。

🗓 2. 手続きの全体フロー
取得手続きは、取得する対象が「全員(全部)」か「一部の株主(一部)」か、また「いつ取得するか」によってプロセスが異なります。
① 取締役会(または株主総会)の決議
取得条項に定められた「事由」が発生したら、速やかに取締役会(取締役会非設置会社の場合は取締役の過半数の一致)を開催し、取得に関する具体的な事項(取得日など)を決定します。
② 株主への通知または公告
  • 全員から取得する場合:取得日の2週間前までに、株主に対して通知(または公告)を行う必要があります。
  • 一部から取得する場合:どの株主から取得するかを定めた後、取得日の2週間前までに通知しなければなりません。
  • 【実例】「例外的な即時取得」
    定款(発行条件)に「取得事由が生じた日に直ちに取得する」旨をあらかじめ定めている場合は、この2週間前の通知・公告期間を省略して即日に取得・交付することが可能です。実務ではこの設計が多く見られます。

🗒 3. 登記申請の必要書類(チェックリスト)
取得が完了したら、「取得日(効力発生日)から2週間以内」に、本店の管轄法務局(横浜市西区であれば横浜地方法務局 本局)へ登記申請を行います。
一般的に必要となる書類は以下の通りです。
  • 変更登記申請書
  • 取締役会議事録(または取締役の過半数の一致を証する書面)
    • 取得に関する具体的な決定を行った議事録です。

  • 定款(写し)
    • 取得条項の定め(特に「直ちに取得する」旨の文言など)を法務局に証明するために添付します。

  • 株主総会議事録・総会株主リスト(※必要な場合のみ)
    • 取得事由の決定権限が株主総会にあると定款で定めている場合に必要です。


⚠️ 4. 登記における3つの重要実務ポイント
① 「発行済株式総数」は変わらないが、「内訳」が変わる
今回のスキームでは、A種類株100株を取得して、対価として普通株100株(または計算された比率の株数)を交付するため、会社全体の発行済株式総数は増減しない(または比率により微増減する)ことになります。
登記簿上は、「普通株式の数が増え、A種類株式の数が減る(消却を伴う場合は発行可能コマ数も変動)」という変更が同時に起きます。
② 登録免許税の計算に注意
この登記にかかる登録免許税は、一律 30,000円(カの区分)です。
資本金の額が増加するわけではない(株式の内訳が変わるだけ)ため、資本金増加に伴う「1000分の7」の課税は原則として発生しません。
③ 「発行可能種類株式総数」の枠超えに注意
対価として交付する側の株式(例:普通株式)の「発行可能種類株式総数(枠)」に余裕があるか、事前に必ず確認してください。転換によって枠を超えてしまう場合は、事前に枠を広げる定款変更(株主総会決議)が必要です。

💡 まとめ
取得条項付株式の取得と別種株式の発行は、J-KISSのコンバージョンやIPO直前の優先株処理など、コーポレート・ファイナンスの極めて重要な局面で行われます。
スケジュールが1日ズレるだけで全体のタスクに影響が出るため、定款の文言(2週間の据置期間が必要か否か)を早期に確認し、司法書士などの専門家と連携して進めることが成功の鍵となります。
弊所にて無料相談を行っております。お気軽にお問い合わせください。

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