募集株式発行と減資を同時に行う「増減資」で、資金調達と「資本金1億円以下」の節税メリットを両立する方法
公開日:2026年09月18日
カテゴリー:コラム
募集株式の発行(増資)と資本金の額の減少(減資)を同時に行う「増減資(ぞうげんし)」は、企業の財務体質を改善するための非常に有効な手法です。
例えば、「資本金1億円の壁」を意識した節税対策や、累損(累積赤字)の解消、経営再建時の株主構成の見直しなどでよく活用されます。本コラムでは、この手続きを同時に行うメリットや法的実務、注意点を分かりやすく解説します。
💡 なぜ同時に行うのか?2つの主なメリット
1. 税制上の優遇措置を受けるため(節税対策)
日本の税制では、資本金の額が1億円以下の企業は「中小法人」とみなされ、以下のような多くの税制上のメリットを享受できます。
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- 法人税の軽減税率の適用(年800万円以下の所得に対して約15%)
- 交際費の損金算入限度額(年800万円)
- 外形標準課税(資本金1億円超の企業に課される税金)の対象外
増資によって事業資金を調達しつつ、同時に減資を行って資本金を1億円以下に抑えることで、資金確保と節税を両立させることができます。
2. 欠損金の補填(累積赤字の解消)
過去の赤字(繰越利益余剰金のマイナス)が残っていると、企業の信用力が落ち、株主への配当もできません。増資で払い込まれた資金を原資として減資を行い、その減少分を欠損金の補填に充てることで、貸借対照表(B/S)をきれいに修復することができます。
🗒 異例の「官報公告」省略?手続きのワンポイント実務
通常、資本金を減少させる(減資)際には、会社の債権者を保護するために「官報公告」および「個別催告」による1ヶ月以上の債権者異議申立期間を設けることが必須です(会社法449条)。
しかし、募集株式の発行と減資を「同時」に行う場合、一定の要件を満たすと債権者保護手続き(官報公告など)を省略できるという大きな特例があります。
⚠️ 手続きを省略できる条件(会社法449条1項但書)
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- 減少する資本金の額の「全額」を、欠損のてん補に充てること。
- 減資の効力発生日における資本金の額が、手続き前の資本金の額を下回らないこと。
【イメージ例】
- 現行の資本金:5,000万円
- 募集株式発行による増資:+3,000万円(新資本金:8,000万円)
- 同時の減資:▲2,000万円(最終的な資本金:6,000万円)
この場合、最終的な資本金(6,000万円)は元の資本金(5,000万円)を上回っているため、減資分(2,000万円)をすべて欠損補填に充てるのであれば、債権者保護手続きをスキップしてスピーディーに登記を進めることが可能です。
逆に、「資本金1億円以下に下げる」ことを目的とした減資の場合、通常は元の資本金額を下回るため、債権者保護手続き(1ヶ月以上の期間)を省略することはできません。 スケジュールを組む際は注意が必要です。
📅 増減資の一般的なスケジュール(債権者保護が必要な場合)
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- 株主総会の招集通知・開催
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- 募集株式の発行(第三者割当増資など)の決議
- 資本金の額の減少(減資)の決議
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- 官報公告の申込み・掲載(約1ヶ月間)
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- 債権者への異議申立期間の確保
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- 出金の払込み
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- 投資家(引受人)による出資金の払込み
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- 効力発生・登記申請
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- 増資と減資の効力が発生
- 効力発生から2週間以内に法務局へ変更登記を申請
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- 株主総会の招集通知・開催
🔎 登記手続きの注意点
増資と減資を同時に行う場合、法務局への変更登記申請は「1件の申請書」にまとめて行うのが一般的です(登録免許税の合理化や添付書類の重複を避けるため)。
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- 添付書類: 株主総会議事録、取締役会規則、払込みを証する書面、官報公告の原本(省略できない場合)などが必要となります。
- 登録免許税: 増資分(増加した資本金の額の1000分の7、最低3万円)と、減資分(3万円)の双方がかかります。
財務戦略として非常にパワフルな「増減資」ですが、株主比率の変動や税務上の要件クリアなど、専門的な判断が必要です。実施の際は、事前に司法書士や税理士などの専門家へ相談しながら進めることを強くお勧めします。

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