menu

恵比寿駅前の相続に強い|司法書士法人・行政書士事務所ネクストリーガル

家族信託・民事信託の「入り口」〜不動産に信託登記を入れる目的と実務の基本〜

公開日:2026年09月10日 カテゴリー:コラム タグ:
シニア世代の認知症対策や、円滑な資産承継の切り札として定着した「家族信託(民事信託)」。
信託契約を締結した後、対象となる不動産を「信託財産」として法的に保全するために絶対に欠かせないのが、法務局への「所有権移転及び信託登記」の申請です。
今回は、親(単独所有)の不動産を子に信託するケースをベースに、登記の目的を「持分一部移転」ではなく不動産丸ごと動かす「所有権移転」とする際の実務プロセス、申請書の書き方、および登録免許税の仕組みを徹底解説します。

対面で説明する司法書士


1. なぜ「所有権移転」と「信託」の2つを同時に登記するのか?
不動産を信託する場合、法務局では「① 所有権移転登記」「② 信託登記」を連件ではなく、1の申請書で一括して(1の受付番号で)申請するという厳格なルールがあります。
  • 所有権移転の役割:形式的な名義(管理権・処分権)を委託者(親)から受託者(子)へ移すため。
  • 信託登記の役割:この不動産が受託者の「個人の財産(固有財産)」ではなく、信託契約に基づき分別管理されている「信託財産」であることを第三者に公表(対抗)するため。
この登記を完了することで、登記簿の所有者欄(甲区)には受託者の氏名とともに「信託財産受託者」と明記され、その下に委託者・受託者・受益者や信託条項の要約が記載された「信託目録」が作成されます。

2. 登記申請書のリアルな書き方(一括申請のスタンダード)
不動産の所有権(1分の1すべて)を委託者Aから受託者Bに移転させ、同時に信託登記を申請する場合の正しい申請書の構成です。
📌 申請のポイント
登記の目的は「所有権移転 及び 信託登記」となります。原因は「信託」の一文字です。
markdown
【登記申請書の記載例】

登記の目的:所有権移転 及び 信託登記

原   因:令和8年9月10日 信託

権 利 者:(受託者)東京都世田谷区〇〇
      B

義 務 者:東京都渋谷区〇〇
      A

添付情報:登記原因証明情報、登記識別情報(または登記済証)、
     印鑑証明書、住所証明情報、信託目録に記録すべき情報

登録免許税:金〇〇円
     (内訳)所有権移転の分 金〇〇円(※後述の優遇税率を適用)
     (内訳)信託登記の分  非課税
コードは注意してご使用ください。


3. 信託スタート時の「税金(登録免許税)」と強力な減税措置
信託の「出口(終了時)」だけでなく、実は「入口(開始時)」にも非常に大きな税制上の優遇措置が設けられています。
① 所有権移転のパート(減税措置あり)
通常の売買であれば「土地:1.5%、建物:2.0%」の登録免許税(固定資産税評価額に対する割合)がかかりますが、信託による移転の場合は以下の通り大幅に減税されます。
  • 土地0.3%(※登録免許税法第10条の規定による優遇措置)
  • 建物0.4%
② 信託登記のパート(非課税)

弊所応接室

  • 登録免許税法第7条第1項第1号の規定により、信託登記そのものの税金は非課税となります。
つまり、通常の売買や贈与で名義を変えるよりも、はるかに低い税負担(コスト)で不動産の管理権を世代交代させることが可能です。また、信託による名義変更は形式的な移転であるため、受託者に対して不動産取得税も課税されません。

4. 実務上の最重要書類「信託目録に記録すべき情報」
登記申請の際、申請書本体とは別に「信託目録に記録すべき情報」というテキストデータ(または書面)を作成し、法務局へ提出します。これは、将来この不動産を売買したり担保に入れたりする際、第三者(銀行や買主)が「この受託者は本当に不動産を売却する権限を持っているか?」を確認するための最も重要な情報になります。
📋 主な記載項目
  • 委託者、受託者、受益者の氏名・住所
  • 信託の目的(例:高齢となった委託者の生活安定および福祉の確保など)
  • 信託財産の管理方法(例:受託者は不動産の賃貸、売却、抵当権設定等の一切の権限を有する、など)

  • 信託の終了事由(例:委託者兼受益者Aの死亡、など)
ここに記載する権限の範囲を誤ると、将来受託者Bが不動産を売却しようとした際に「登記簿(信託目録)に売却権限が明記されていないため取引できない」という事態に陥るため、信託契約書の作成段階から法務局への登記を見据えた文言設計が求められます。

5. まとめ:入口から出口を見据えたトータル設計を
不動産の「所有権移転及び信託登記」は、一見すると定型的な手続きに見えますが、信託目録の作成や税率の適用など、不動産登記法と信託法、税法が複雑に絡み合う高度な実務です。
さらに、この「入口」での登記の組み方が、将来の売買(3為取引など)や信託終了時の「出口」のスムーズさに直結します。
安全な資産管理体制を築くためにも、信託に強い司法書士や税理士などの専門家と綿密に連携しながら進めることを強くお勧めします。

不動産登記   各種相続手続き   相続放棄   遺言書作成   生前贈与   生命保険の活用