相続の手続きの流れを解説|発生日から何日以内にすべき?
誰しも訪れる大切な家族との別れ、その際に必ず直面するのが相続です。
そして相続とひとくくりに言っても多岐にわたる手続きが発生します。
自治体への死亡届にはじまり、預貯金の口座解約・名義変更、公共料金引落口座変更、運転免許証や健康保険証の返却、生命保険金受取、不動産名義変更、相続税申告など多種多様な手続きがあります。
以下の一覧表で相続発生時期と必要な手続きを見ていきます。
▼・・・司法書士に依頼をお勧めする難しい手続き
相続発生(死亡)日から | 必要な手続き |
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1週間以内 |
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2週間以内 |
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1ヶ月以内 |
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3ヶ月以内 |
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4ヶ月以内 |
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6ヶ月以内 |
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10ヶ月以内 |
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1年以内 |
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2年以内 |
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3年以内 |
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相続発生から1週間以内の手続き
死亡診断書取得~死亡届提出
届出人の所在地等、自治体窓口に提出します。
死体埋葬、火葬許可証取得
葬儀後の遺体火葬時に必要になるので、死亡届と同時に申請して取得します。
相続発生から2週間以内の手続き
年金受給停止の手続き・年金受給権者死亡届の提出
提出期限 |
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必要書類 |
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入手場所 |
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費用 |
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提出先 | お近くの年金事務所または年金相談センター |
ポイント①身分証明書は早めに取得
必要書類のうち、受給権者死亡届はマイナンバー登録がある場合不要ですが、未支給年金がある場合添付を省略することができません。
また、住民登録と本籍地が別の自治体になっている方も多いので、その場合は住民票除票で手配を進めた方がスムーズです。
ポイント②司法書士に代行を依頼する
こうした住民票除票や戸籍謄本の取り寄せは司法書士にご依頼をいただけると代行が可能です。
多忙につき自身で市役所に行く時間がない、高齢でなかなか外出が難しく取得方法がよく分からない方など、是非ご相談ください。
費用として1通あたり報酬1500円と市役所に支払う手数料、郵便取り寄せの場合は郵送費及び定額小為替手数料を頂戴します。
相続発生から1ヶ月以内の手続き
被相続人戸籍謄本収集
金融機関における預金口座解約・名義変更、不動産相続登記など多くの場面で必要な死亡した方の戸籍謄本ですが、必要な書類の内容を以下に掲載します。
相続人が配偶者(妻または夫)と子供 |
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相続人が配偶者と両親 |
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相続人が配偶者と兄弟姉妹 |
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※重複する戸籍謄本は1通あれば問題ありません。
死亡から2日目以降に取得すべき
相続人の現在戸籍謄本は被相続人の死亡日以後のものが必要です。
死亡日以前に取得されました場合、再度取り直しとなってしまいますのでご注意ください。
金融機関によっては、発行から3ヶ月~6ヶ月以内の戸籍謄本が必要という場合もあります。
詳細は各金融機関へ確認が必要です。
死亡保険金受取請求
保険金受取請求は、受取人から生命保険会社へ連絡します。
連絡の際に証券番号が必要となります。
相続発生から3ヶ月以内に請求
相続発生から1ヶ月以内という定めはありませんが、保険金を受け取る権利は支払い自由が発生した翌日から起算して3ヶ月以内で時効にかかると約款で定められています。
可能な限り速やかに手続きされることをお勧めします。
遺言書有無の検索・調査
被相続人が自宅に遺言書を作成して保管していた(自筆証書遺言)場合や、公証役場において遺言公正証書を作成している場合があります。
遺言書がある場合それに基づいて相続手続き(遺言執行)を行う必要があります。
①自筆証書遺言とは
自筆証書遺言とは、遺言者が自筆で本文・氏名・日付のすべてを作成する遺言書のことです。
発見された遺言書は家庭裁判所にて検認の申立を行い、裁判所にて開封が行われます。
発見後、相続人が意図的に開封、破棄を行ってはいけません。
遺言書検認は家庭裁判所に申立を行ってから3~4週間後の期日を定め、家庭裁判所に出頭することとなります。
期日を要する手続きとなりますので早めの申立が重要です。
②遺言公正証書とは
遺言公正証書は公証役場にて、公証人と証人2名の面前で作成される遺言書です。
遺言公正証書は、相続開始後に家庭裁判所の検認を経ることなく相続手続きを開始できるものです。
また、正本及び謄本を紛失してしまった場合でも、遺言者の死後に相続人より公証役場に再発行を請求することが可能となっています。
遺言書は故人の遺志が記載された大切な書類で相続手続上非常に大きな影響を及ぼすため、1ヶ月以内の検索調査が必要な手続きと言えるでしょう。
財産調査
相続財産として検索・調査すべき財産の種類を以下の一覧表で見ていきます。
財産の種類 | 必要なもの・調査方法 |
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不動産 |
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借地権・借家権 |
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預金・現金 |
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株式・その他有価証券 |
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生命保険金 |
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ゴルフ会員権 | 自宅金庫・貸金庫等 |
宝石・骨董品 |
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自動車 | 車検証 |
上記相続財産の中でも承継財産の比率が大きいのが金融資産、不動産です。
金融資産について
預貯金で言えば通帳、株式や有価証券(投資信託等)では証券会社からの運用報告書等、生命保険金では保険証書があり、財産有無の調査は比較的容易です。
不動産相続について
不動産は毎年6月頃に所有者に対して送付される固定資産税納税通知書を元に登記簿謄本で所有物件を確認します。
しかしそれだけでは不十分で、司法書士に委任をいただければ名寄帳を市区町村の資産税課に請求し、所有・共有物件の全てを確認することができます。
数十人で共有しているような道路部分などは後々相続登記を失念しかねません。
全ての物件について確認を行うためには司法書士にご依頼いただくことをお勧めします。
遺産分割協議の開始
相続人の確定、遺言書の有無確認、金融資産及び不動産の内容把握ができた段階でいよいよ遺産分割協議に入ります。
相続人確定のためには被相続人の死亡戸籍謄本を本籍地の役場で取得し、そこから古い除籍謄本・原戸籍謄本へと出生時にまで遡って戸籍調査を行います。
被相続人に子供がいれば子供全員の現在戸籍謄本、子供がいなければ両親の現在戸籍謄本が必要になります。
更に、子供がなく両親が死亡している場合は兄弟姉妹が相続人となり、両親の出生戸籍から死亡戸籍謄本と兄弟姉妹全員の現在戸籍謄本が必要になります。
1ヶ月以内の手続きと記載しておりますが、資産内容や法定相続人確定作業の進行状況により前後する場合があります。
特に戸籍上転籍や結婚、離婚を繰り返している場合は時間を要する可能性が高くなります。
遠方の相続人、連絡状況が不十分な相続人に対してはお手紙を添えた上で司法書士から相続手続きご協力のお願いや遺産分割協議書の送付などを代行することも可能ですのでご相談ください。
相続発生から3ヶ月以内の手続き
相続放棄申述・限定承認
相続放棄とは
被相続人に借金や債務が多く残存し負担するのが困難な場合や、被相続人とは疎遠で連絡不通な場合などに使用される手続きです。
相続放棄とは相続人としての権利義務の一切を取得せず、もしくは負担しないことを家庭裁判所に対して申立てることで認められるものです。
限定承認とは
限定承認は、被相続人のプラスの財産の範囲で債務を負担する手続きで、家庭裁判所に申立を行います。
この手続きは、被相続人の財産や債務状況が不明な場合などに相続人が過度のリスクに晒されるのを警戒している場合などに使われます。
両方の手続きとも相続が発生したことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申立を行う必要があります。
司法書士にご依頼をいただければ、申立手続代行が可能です。
相続放棄熟慮期間延長申立
相続が発生してから3ヶ月以内に相続放棄を行うか承認するかの判断がつかない場合があります。
(財産状況の調査に時間を要したなど)
この場合家庭裁判所に申立を行うことにより放棄するか承認するかを熟慮する期間を伸ばすことができます。
相続発生から4ヶ月以内の手続き
被相続人の所得税確定申告(準確定申告)
通常の確定申告とは異なる手続きとなるため、税理士にご連絡の上進めることをお勧めします。
相続発生から6ヶ月以内の手続き
遺産分割協議書の作成
相続人が多数の場合や遠方にお住まいの方がいる場合などは遺産分割協議完了に半年ほど時間を要することも考えられます。
相続税申告がこの後控えていることから逆算すると、半年ほどで協議書が整うことが望ましいです。
また、協議書作成後に相続人間での配分変更が決まった場合には速やかに司法書士までご連絡ください。
再度協議書を作成の上手続きを進めます。
金融機関口座解約・名義変更手続き
各金融機関に遺産分割協議書の提出が求められます。
原本は手続き完了後に返却されますが、手続きを行う金融機関の数が多い場合は遺産分割協議書を複数作成することも考える必要があり、その際は司法書士にご連絡ください。
不動産相続登記
金融資産と共に不動産相続登記手続きも進めていく必要があります。
厳密に半年以内の手続きと定められてはいませんが、不動産登記法上、実態を登記と整合させることが求められており司法書士に登記手続きをご依頼ください。
費用面では司法書士の報酬、法務局に支払う登録免許税があります。
一般的な自宅の土地建物では約15~20万円程です。
なお、不動産の数や登録免許税額によって費用が増減しますので事前見積もりが必要な場合は司法書士までご連絡ください。
相続発生から10ヶ月以内の手続き
相続税の申告
具体的な手続きは税理士にご相談ください。
遺産分割協議の進行状況によっては、一度法定相続分に従い申告を行った上で協議成立後に修正申告を行うなどの対応が必要な場合もあり注意が必要です。
6ヶ月以内の手続きで記載しました金融機関、不動産登記手続きより優先して進める必要があります。
場合によっては手続きが先後することもあります。
相続発生から1年以内の手続き
遺留分侵害請求
兄弟姉妹以外の相続人には遺留分という、最低限確保されなければならない財産持分が存在します。
ところが、その持分を侵害した遺言書に基づき相続手続が行われた場合に侵害した分の財産を取り返すための手続きを行うことができます。
内容証明郵便により侵害の相手方へ送達を行い、連絡がない場合は家庭裁判所への調停を申し立てることになります。
この請求は法定相続分に従った相続、遺産分割協議による相続手続きの場合は対象となりません。
相続発生から2年以内の手続き
葬祭費・埋葬費請求
葬祭費、埋葬費は葬儀を実施してから2年で時効となり、申請できなくなります。
相続発生から3年以内の手続き
死亡保険金受取請求期限
死亡保険金受取請求は3年で時効となります。
可能な限り早めに受取請求を行いましょう。
不動産相続登記(2024年施行予定)
現時点では予定ですが、2024年に相続登記の義務化を定めた民法が施行される予定です。
この改正民法では相続人が相続登記を申請することなく放置している場合、10万円以下の過料に処せられる可能性があります。
改正後は所有者不明土地問題などとの関連で相続登記に対する関心が高まることが想定されます。
相続が発生したことを知ったら
さてこれまで相続が発生した後の各種手続きを記載してきましたが、いかがでしょうか?
市役所への各種届出や遺産分割協議、金融資産、不動産、そして相続税申告など多種多様な手続きを相続人が行う必要があります。
しかし、法定相続人確定や遺産分割協議書の作成など要所要所で司法書士がサポートできる手続きもございます。
例えば相続人が多い場合、戸籍謄本を集めるだけでも相続人には大きな労力や時間的負担がかかります。
是非こうした手続きを司法書士にご依頼ください。
相続は故人の財産を次世代に承継するための非常に大切な区切りです。
相続を「争続」としないためにも、司法書士が相続人の皆様の付託に応え、業務を行います。