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相続登記の義務化|改正後の手続き・登記しないリスクについて解説

公開日:2022年04月12日 カテゴリー:コラム, 相続 タグ:

2024年4月1日以降相続登記が義務化されます。

相続登記とは、不動産の名義人が死亡した後に相続人の名義に変更することをいいます。

現在(2022年4月時点)のところ、相続登記は義務ではなく、「しなくてもいいですけど、しないと不利益を受けますよ」といった程度の法律になっています。

今回は、これまで長年義務化されてこなかった相続登記が義務化されるに至った背景や法改正後の具体的な内容、さらには相続登記の重要性について解説していきます。

改正前の不動産登記の罰則について

悩む女性の画像

今回の相続登記の法改正を理解するためにまず、現在の不動産登記について説明していきます。

不動産登記記録には、面積や種類などの不動産自体の形状を記載する「表題部」と所有権や担保権などの権利関係を記載する「権利部」があります。

表題部の義務について

「表題部」の登記は、現在(2022年4月時点)の法律でも義務となっており、怠ると過料の対象になります。

※表題部とは、土地や建物に関する物理的状況を表示したものが記録されている部分のこと。

権利部の義務について

※権利部とは、所有権・賃借権・抵当権など、権利に関する状況を記載した部分のこと。

所有権や担保などを記載する「権利部」の登記は現在の法律では義務化されておらず、登記をしなくても罰則はありません。

今回の話のメインとなる相続登記とは、不動産の登記名義人が死亡した場合に相続人の名義に変更することで、これは所有権という「権利」に関する登記にあたります。

そのため、上述した通り、現在(2022年4月)は、相続人名義に登記しなくても現在のところ罰則はありません。

相続登記が義務化される理由

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義務化となった原因

ケース①

遺産分割協議(相続人同士の話し合い)を行う際、相続人同士の仲が悪い場合や疎遠な関係になってしまうと、連絡が取りづらくなり、その結果、不動産が放置されることになります。

ケース②

不動産自体に価値がない場合に放置されることもあるようです。

山林などの地方の土地は、評価額が数千円などというものも多く存在し、仮に相続で名義変更しても売却できないことが予想されるために放置されるようです。

義務化する理由

このような理由により、長い年月放置された結果、日本国内で所有者不明になっている不動産が膨大な数存在しています。

その経済的損失額は約6兆円ともいわれています。

今後そういった損失を避けるために政府が取った策が今回の法改正の相続登記義務化ということです。

相続登記が義務化されるのはいつから?

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相続登記の義務化に関する法律は、2024年4月1日以降に施行されることになっています。

あと数年しかありませんので、今のうちにポイントを確認し法改正に備える必要があります。

相続登記が義務化されるとどうなるの?

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相続登記の申請は3年以内に行うことが義務化

相続登記の期限は、

「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内」とされています。

ただ、遺産分割協議がまとまらない場合もあり、その場合には遺産分割協議成立から3年以内に相続登記をする必要があります

改正内容

1つ目

今回の改正では、応急手当のような趣旨の「相続人申告登記」という申告制度が新設されます。

相続人申告登記とは、「自分が相続人に該当すると思われますので、いったんその旨申告しておきます」という自己申告をしておく制度です。

これがなされると、法務局の登記官が登記記録に相続人から申告があった旨を記録し、その申告した相続人はいったん相続登記の義務を果たしたことになります。

もちろん、後日遺産分割が成立した場合には、その不動産を取得することになった相続人名義の登記をしなければなりません。

2つ目

上記の内容のほか、遺産分割や相続後の分配が長引くことが予想されるような場合には、いったん法定相続分で相続登記をしておくと、その後の登記手続きを一部簡略化することが認められるといった制度も新設されます。

  • 遺産の分割協議又は審判もしくは調停による所有権の取得に関する登記
  • 他の相続人の相続放棄による所有権の取得に関する登記
  • 特定財産承継遺言による所有権の取得に関する登記
  • 相続人が受遺者である遺言による所有権取得に関する登記

本来自分で手続きするのが難しいような内容の登記でも、法定相続登記をいったんしておけば一部簡略化して手続きできるようにすることで相続人の負担を軽減しようとするものです。

罰則

上述した一定の期限内に相続登記がなされない場合には、10万円以下の過料の対象となります

登記名義人の住所変更があった場合の変更登記の義務化

改正内容

登記名義人の住所変更が行われた際は、変更を申請しなければなりません。

これを住所(氏名)変更登記といいます。

結婚などで苗字が変わった場合にも同様です。

今回の法改正では、この住所(氏名)変更登記についても義務化しています。

住所(氏名)変更登記の場合は、変更があった日から2年以内に変更登記をする必要があります。

不動産登記記録の所有者欄には、「住所」「氏名」が記載されます。

法務局の登記官は、この2つが印鑑証明書や住民票の現在の記載内容と一致していることから、登記の申請人が登記記録上の名義人と同一人物であると判断しています。

罰則

住所(氏名)変更登記を期限内にしないと、5万円以下の過料の対象となりますので、こちらも併せて注意が必要となります。

番外編|不動産取得後の住所変更について

ただ、売主が不動産を取得した際の住所から転居等により現在の住所が変更されている場合には、所有権移転登記に先立って住所変更の登記をし、印鑑証明書の記載と一致させる必要があります。

登記した際に法務局に所有者情報が提供されることが義務化

改正内容

現在は、不動産ごとに登記事項証明書が発行されるため、所有する不動産の一覧を法務局で確認する制度はありません。

今回の法改正により、不動産の登記名義人またはその相続人は法務局で手数料を支払って、所有する不動産の一覧を取得することが可能になります。

これにより、被相続人の所有していた不動産を漏れなく把握することができるようになります。

相続登記をする場合にはかなり便利になることでしょう。

土地の相続放棄が可能になる

上で少し触れましたが、相続登記が放置される背景には、山林などの価値が著しく低い不動産が存在することが挙げられます。

仮に、相続登記をして自分の名義に変えたとしても、売却等の処分ができなければ自分が死亡した場合に、処分に困る不動産を子供に引き継ぐことになってしまいます。

そのため、価値のない土地については放置されていく傾向にあります。

今回の改正ではこれを回避するために、不要な土地は国が引き取り、管理する制度ができています。

ただし、この法改正内容は適用される条件が厳しく、また申請時に国への負担金を納めなければなりません。

そのため、現時点では利用する人は極めて少ないのではないかとみられています。

相続登記をしない場合のリスク

祖父母と家族の画像

相続登記は義務化にかかわらず、なるべく早めにしておかないといくつかの不利益を被ることになります。

土地の売却ができない

被相続人名義になっている不動産を売却して金銭財産に換えたいと考えても、被相続人名義のままでは売却手続きができません

不動産会社に相談してもまずは相続登記をするように案内されます。

土地を担保として利用できない

上記の売却と同様に、自宅の不動産を担保に入れて金融機関から融資を受けようと考えても、被相続人の名義のままでは抵当権の設定登記ができないため、金融機関は融資をしてくれません。

※抵当権の設定とは、ローンを組む時に不動産を担保として登録すること

土地の権利を失うこともある

相続登記を放置している間に、相続人の一人に借金があり返済出来ないと判断された場合、相続登記未了の不動産を差し押さえられてしまいます。

差し押さえとは

差し押さえとは、債務者の財産を裁判所の手続きを利用し、強制的に売却する制度です。

オークションのようなイメージをしていただければよいですが、一番高く買ってもらえる人に売り渡し、その売買代金からお金を回収するという手段です。

では、例えばBCDの3人が相続人でCの債権者(お金を融資した側)が相続登記がされていない不動産を差し押さえようとした場合には、いったんBCD3人の法定相続登記を代わりに行い、Cの持分だけを差し押さえます。

もちろん、BDは関係ありませんからCの持分のみしか差し押さえできません。

そのような不動産の一部の持分だけを競売にかけて買い受ける専門不動産業者もあります。

そうなると、BDにとってはその買受人との共有状態になってしまうため、それ以降は相続人の中での話し合いだけでは不動産を売却等を決定することはできなくなってしまいます。

相続登記を行うなら司法書士へ相談

士業の画像

司法書士へ依頼するメリット

相続登記は、集める書類も多く、今後のことも想定しながら手続きをしていくことが必要です。

そのため、最初の段階から司法書士に相談することをお勧めします

それにより、迅速かつ正確な手続きをすることができます。

また、税金面の問題も提携している税理士を紹介してもらうことができるなど、メリットは大きいといえます。

司法書士へ依頼した際の費用

司法書士に相続登記を依頼した場合には、内容にもよりますがおよそ8万円~15万円程度が司法書士の報酬となり、その他登録免許税や公的書類取得の実費などがかかります。

ネクストリーガルの費用

所有権移転(相続) 5万円~

(着手金として3万円いただきます)※別途、登録免許税等がかかります。

種類 費用
所有権移転(相続) 5万円~
遺産分割協議書作成 3万円~
登録免許税 不動産の価格(課税額)×税率0.4%
戸籍取寄せ 実費+3万円~
謄本取得 実費+1通1,500円

※上記、別途オプションとして発生します。

まとめ

今回ご説明したように、相続登記が義務化することになります。

ただ、改正法施行日を待たず、すでに相続が開始している場合にはこれを機に相続登記の手続きを検討してみてはいかがでしょうか。

早ければ早いに越したことはありませんので、ぜひ今回の記事を参考にしてみてください。