マンションの名義変更|タイミングや手続きの流れ・必要書類・費用について
法務局には「登記記録」というものがあります。
一般的には登記簿と呼ばれているもので、登記記録には不動産ごとに不動産の番号・形状や所有者、担保(抵当権等)などの情報が記載されています。
この登記記録は、誰でも法務局に請求することができます。
その証明書を「登記事項証明書」といいます。
すなわち、不動産を所有しているということは、その情報がすべての人に公開されることになります。
また、相続などでマンションの名義を変更する際は、登記事項証明書を確認することで、必要な書類や手続きを検討することができます。
マンションの名義変更について
不動産の名義変更の意味
不動産の名義変更とは、何らかの原因によって所有者(不動産の名義人)が変わった場合に必要となる登記申請手続きのことを言います。
法律上は所有者が変更になっても名義変更の登記を義務化しているわけではありません。
(相続に関して2024年から義務化される予定)
では、所有者が変更になった場合に名義変更登記をしなければどうなるのでしょうか。
法律の趣旨は、「名義の変更をするかしないかは自由ですが、しなかったことによる不利益は自分で受けてください」という建前です。
ただ実際のところ、高額の不動産を買う契約をする際に「私が所有者ですが、まだ名義変更してないのです」という不動産にお金を支払うことができるでしょうか。
不動産の名義変更は、取引の信頼のために必要とされるのです。
マンションの名義変更が必要なタイミング
相続があった場合(相続登記)
<タイミング>
不動産の名義人が死亡後できるだけ速やかに
<期限>
なし ※2024年から義務化予定
離婚した場合(財産分与)
<タイミング>
離婚届を提出後できるだけ速やかに、離婚届提出の後に財産分与の話し合いがまとまった場合は、その成立後速やかに
(財産分与する話し合いがある場合のみ。
離婚=名義変更ではない)
<期限>
名義変更についてはなし
※ただし、財産分与の請求自体は離婚後2年以内
生前贈与があった場合
<タイミング>
不動産を無償で譲り渡す契約が成立した後速やかに
<期限>
なし
不動産の売買があった場合
<タイミング>
売買代金決済日
<期限>
なし
マンションの名義変更の手続きを行う場所
上記の事由が発生した場合には、速やかに必要書類をそろえて不動産(マンション)を管轄する法務局に登記を申請します。
法務局の管轄は、法務省のURLで確認することができます。
管轄のご案内:法務局 (moj.go.jp)のホームページ
名義変更をしないとトラブルになる可能性がある
では、不動産の所有者が変更されたにもかかわらず名義変更登記がされていない場合にはどのような不利益が生じるかを確認しておきましょう。
今後、マンションの名義変更が出来なくなるリスク
所有者が変更されたにもかかわらず、新しい所有者の名義になっていなければ、今後、所有者の変更(再売却など)があった場合に名義変更ができなくなってしまいます。
銀行から融資を受けることが難しくなるリスク
またその不動産を担保に入れて銀行などから融資を受けることが難しくなるかもしれません。
不動産の売主に不利益が出るリスク
さらに、固定資産税(マンション税)の請求は、登記記録上の名義人あてにされるため、不動産を譲った側(売主や贈与した人)に固定資産税の請求がなされるという不利益が生じてきます。
相続に関して名義変更をしないと…
亡くなった方の名義のままになっているうちに、相続人の誰かが死亡してさらに相続が発生したということはよくあります。
その場合には、相続人同士の関係性が疎遠になってくる可能性があるため、不動産の名義変更を含めた相続財産分配のための話し合い(遺産分割協議)をしようとしても、連絡が取れなかったり、話がまとまらないことも出てくるため、さらに放置されていき収拾がつかなくなることがあります。
ですから、最初の相続が発生した際に名義変更をしておけばこのようなことにはならない可能性が高いです。
この背景により、相続人が容易に把握できない所有者不明不動産が日本全国で増えていき予想される経済的損失が莫大な額となってきたため、2024年を目処とした相続登記義務化に至ったわけです。
マンションの名義変更は自分でもできるの?
不動産の名義変更をする場合には、当事者自身が自分で申請することが可能です。
専門家(司法書士)だけが申請できるというわけではありません。
取引以外では「法律上の効力発生日=名義変更登記申請日」ではない場合があります。
例えば相続登記の申請などは相続関係が複雑でないような場合には、仮に書類に不備があってもやり直すこともできることも多いです。
そのようなケースにおいては、ご自分で登記申請をすることを検討されてもよいかもしれません。
ただ現実的にはすべての名義変更登記を当事者ができるというわけではありません。
銀行に融資をしてもらう場合、作成した名義変更登記申請の書類を信用し、銀行が2,000万円以上の高額なお金を融資するということは滅多にないことです。
不動産の取引において、司法書士に登記申請を依頼せずに名義変更をするケースはほとんどありません。
他の相続人に実印を押し直してもらうことができないような関係性であれば、最初から司法書士に依頼することをお勧めします。
また、登記申請には期限はないものの、そろえる書類もあり法律の知識も必要となるため、ご自分で準備をしようとすると時間がかかるため、迅速かつ確実に名義変更を完了するためにはできるだけ早めに司法書士に依頼されることが重要となります。
マンションの名義変更に必要な費用
マンションの名義変更の際には、市区町村で取得しなければならない公的書類があり、少額ですが市区町村に対して支払う手数料が必要となります。
各市区町村により異なる場合もありますが、一般的な手数料を下記にまとめておきます。
また、遠方の場合に郵送で請求する場合は郵送料もかかりますのでご注意ください。
郵送で書類を集める場合
郵送で手数料を支払う場合には、郵便局で「郵便小為替」を購入して同封します。額が不明な場合には多めに郵便小為替を入れておくと、郵便小為替でおつりが返送され、それを郵便局で換金することができます。
必要書類の取得費用
書類の種類 | 手数料 |
---|---|
住民票の写し | 300円 |
印鑑証明書 | 300円 |
戸籍の附票の写し | 450円 |
戸籍の附票の写し(除票) | 450円 |
税金
登録免許税
登記申請をする際には、法務局に登記免許税(収入印紙代)を支払わなければなりません。登録免許税の計算方法は下記のとおりです。
登記の種類 | 登録免許税の計算方法 |
---|---|
住所(氏名)変更登記 | 不動産の個数×1,000円 |
抵当権抹消登記 | 不動産の個数×1,000円 |
所有権移転登記(土地) | 不動産評価額×1,000分の20 ※1 売買が原因の場合は不動産評価額×1000分の15 |
所有権移転登記(建物) | 不動産評価額×1,000分の20 ※2 住宅用家屋証明書を添付する場合は不動産評価額×1000分の3 |
所有権保存登記 | 不動産評価額×1,000分の4※2 住宅用家屋証明書を添付する場合 不動産評価額×1000分の1.5 |
抵当権設定登記 | 債権額×1,000分の4 ※2住宅用家屋証明書を添付する場合 不動産評価額×1000分の1 |
※1 令和5年3月31日までに登記申請した場合の特例とされていますが、延長される可能性があります。
※2 「住宅用家屋証明書」の取得条件は下記のとおりです。
- 本人が居住すること
- 登記記録上の床面積が50㎡以上であること
- 築年数が木造20年以内、鉄骨造25年以内であること
(年数を経過している場合でも耐震適合証明書を添付した場合はこの条件が緩和されます)
その他費用
・贈与税
贈与した場合に課税されます。
税率や控除等の詳細については、国税庁のホームページを参照ください。贈与税|国税庁 (nta.go.jp)
・不動産取得税
不動産を取得した人に課税されます。
計算方法については、東京都主税局のホームページを参照ください。都税事務所等一覧| 東京都主税局 (tokyo.lg.jp)
・譲渡所得税
不動産を譲渡した場合に、譲渡した人に課税されます。
考え方としては取得した際に支出した額より譲渡したときに得た額が上回る場合に課税されます。
(利益が出た場合)
計算方法や控除額については、国税庁のホームページを参照ください。譲渡所得|国税庁 (nta.go.jp)
司法書士への報酬
相 場 | 7万円~15万円(融資の有無等により異なる) |
---|---|
ネクストリーガル | 5万~ (融資の有無等により異なる) |
マンションの名義変更に必要な書類
相続
一般的な相続登記に必要な書類は以下のとおりです。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・原戸籍謄本
- 被相続人の登記記録上の住所から死亡時までの住所のつながりがわかる住民票除票または戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本(被相続人の死亡日以降に発行されたもの)
- 新しく名義人になる相続人の住民票
- 遺産分割協議書(遺産分割によって取得者を決めた場合)
- 印鑑証明書(遺産分割の場合)
- 相続関係説明図(戸籍・除籍謄本・原戸籍謄本を返却してほしい場合ですべてをコピーするのが手間場合に添付します)
- 不動産評価証明書または固定資産納税通知書(コピーでも可)
離婚による財産分与
元の名義人(登記義務者)
- 住民票または戸籍の附票(登記簿上の住所と現在の住所のつながりがわかるもの)住所の変更がない場合は不要
- 戸籍謄本および本籍地入りの住民票(離婚に際して氏の変更がある場合)
- 印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
- 不動産を取得した際の「登記済権利証」または「登記識別情報」
- 登記原因証明情報(申請人が作成します)離婚協議書でも可
新名義人(登記権利者)
- 住民票
双方が用意するもの
- 離婚したことがわかる戸籍謄本(離婚協議日の後に離婚届を提出した場合)
- 不動産評価証明書または固定資産納税通知書(コピーでも可)
生前贈与
贈与者(登記義務者)
- 住民票または戸籍の附票(登記簿上の住所と現在の住所のつながりがわかるもの)
- 戸籍謄本および本籍地入りの住民票(登記簿上の氏名から氏名変更がある場合)
- 印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
- 不動産を取得した際の「登記済権利証」または「登記識別情報」
- 登記原因証明情報(申請人が作成します)贈与契約書でも可
受贈者(登記権利者)
- 住民票
双方が用意するもの
- 不動産評価証明書または固定資産納税通知書(コピーでも可)
売買
売主(登記義務者)
- 住民票または戸籍の附票(登記簿上の住所と現在の住所のつながりがわかるもの)
- 戸籍謄本および本籍地入りの住民票(不動産取得後に氏名変更があった場合)
- 印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
- 不動産を取得した際の「登記済権利証」または「登記識別情報」
- 登記原因証明情報(申請人が作成します)
買主(登記権利者)
- 住民票
- 印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)融資を受けて抵当権を設定する場合
双方が用意するもの
- 不動産評価証明書または固定資産納税通知書(コピーでも可)
マンションの名義変更でよくあるケースを紹介
相続した場合
父が名義人となっており、母がそのマンションに住んでいる場合に今後も住み続ける場合には母の名義に変更することが多いかと思います。
ただ、現在のところ必ずしも相続登記を申請することは義務化されておらず、子がいる場合には順番としては母の相続が先に発生する可能性が高いため、父死亡の段階で子供名義にしておくことで1回分の相続登記が少なくなることも検討する必要があります。
ただし、今後はその不動産に住む予定がなく売却したい場合にはその前提として必ず相続登記をしなければなりません。
もし、相続登記をせずにそのままになっている場合には、相続人の代表者に固定資産税の請求が送られますので、必ず支払わなければなりません。
離婚によって財産分与があった場合
夫婦が離婚に際して、婚姻期間中に築いた財産を分ける場合に、例えば夫名義の不動産を財産分与で妻名義に変更する場合には名義変更登記を申請します。
ただ、この場合に住宅ローンを借りてまだ完済していない場合が問題となります。
この場合にも名義変更登記申請自体はできますが、抵当権設定契約書に銀行の承諾なしに名義変更をおこなった場合には違約となる旨の記載がされていることが多いのです。
とはいえ、債務者の変更はなかなか難しいため司法書士と相談しながら進めていく必要があります。
生前贈与された場合
親が子に自分名義の不動産を無償で譲渡した場合には、贈与を原因として子の名義に変更する必要があります。
生前贈与は、相続税対策の一環としてされる場合が多く、この場合には名義変更登記が完了していなければ目的が達成できないので、贈与後にすぐに名義変更登記をしておくことが重要です。
まとめ
今回は、不動産の登記名義を何らかの原因で新しい所有者に名義変更するケースについて解説してきました。
今回みてきたように、名義変更登記には法律上期限の制限はありませんが、原因日が到来していたらすぐに新しい所有者に名義変更することで不利益を避けることができます。
また法律上の手間や間違いなく手続きを完了するためにも、登記の専門家である司法書士に依頼されることをお勧めします。