名寄帳とは|不動産の相続に役立つ!取得方法・名寄帳の見方について
不動産を相続するにあたり、最も注意すべきなのは遺産分割協議の際に亡くなった方の不動産が漏れなく全て調査されているかという点です。
しかし、亡くなった方名義の不動産を全て調べるのは容易ではありません。
固定資産税の納税通知書だけを見て判断すると、後になって実は私道やゴミ置き場といった所に共有者としての名義が残っていたという問題も起こり得ます。
こうした亡くなった方名義の不動産を調べるツールとして有効な書類が名寄帳です。
不動産相続に役立つ|名寄帳とは
名寄帳とは、個人が1人で所有している物件と複数人で共有している物件の明細一覧のことです。
名寄帳と課税明細書の違い
土地や建物の名義人(所有者)となっている人は毎年固定資産税を納税する義務があります。
固定資産税とは、土地や建物といった不動産に対してかかる税金です。
そしてその納税通知書が毎年4月から6月にかけて名義人の住所に送付されてきます。
その通知書に同封されているのが課税明細書です。
固定資産税が課税されている土地や建物について、以下の情報が1物件ずつそれぞれ記載されます。
土地 | 所在・地番・地目・地積など |
---|---|
建物 | 所在・家屋番号・種類・構造・床面積など |
しかし、「課税」明細書である以上固定資産税が非課税となる物件は記載されません。
例えば公衆用道路(一般の方が交通のために利用する道路のこと)、墓地といった用途の土地がそれに該当します。
しかし、名寄帳であれば固定資産税課税の有無に関わらず物件の記載が行われ、所有物件の把握ミスを防止することができます。
そのため、相続調査には名寄帳の取得が有効であると言えます。
どのような場合に名寄帳が必要なの?
課税明細書を紛失した場合
課税明細書を紛失した場合、不動産の所有状況を把握できる書類がないため名寄帳が必要です。
複数の不動産を所有、共有している場合
不動産投資をしている方や賃貸物件を抱えている方は、所有状況の把握が必要です。
農地や山林を所有している場合
不動産の評価額が固定資産税課税に見合わないほど低い場合、固定資産税は免税、つまり非課税となるため、課税明細書に物件が記載されない恐れがあります。
農地や山林、或いは山間部の手付かずの土地といった評価額が著しく低い物件を所有している場合は名寄帳でチェックしましょう。
不動産を誰か別の方と共有しているまたはその可能性がある場合
納税通知書は、共有者全員に発送されるのに対し、課税明細書は納税代表者にのみ送付されるため、他の相続人が共有物件の全体を知る書類がありません。
その点、名寄帳は共有物件についても全体を網羅しており、共有物件調査においても有用な書類です。
不動産の名寄帳取得時・内容確認時の注意点
毎年1月1日時点の情報で作成される
名寄帳に記載される物件は、毎年1月1日現在所有している不動産となります。
より正確に言えば「毎年1月1日午前0時」に所有している不動産です。
また名寄帳は、年度単位で発行され書類であり、毎年4月1日以降に新年度の名寄せ帳を取得することができます。
つまり、「毎年1月1日午前0時」に所有している不動産の情報が新年度の始まりである毎年4月1日以降に発行されます。
それを踏まえて1点注意すべき点があります。
例えば、その年の1月1日に亡くなった方が購入・売却した不動産については、4月1日以降に発行される新年度の名寄帳には記載されません。
以下に不動産の購入・売却時期による名寄帳への情報反映について表にしております。
不動産の購入・売却時期によっては名寄帳の情報が正しい情報とならない可能性もあります。
最新の状態を確認するためには、必ず法務局で発行される登記簿謄本を確認するようにしましょう。
不動産購入・売却した日 | 今年度の名寄帳(2021年度) | 翌年度の名寄帳(2022年度) | 翌々年度の名寄帳(2023年度) |
---|---|---|---|
2021年4月1日~12月31日 | 記載なし | 記載あり | 記載あり |
2022年1月1日~3月31日 | 記載なし | 記載なし | 記載あり |
2022年4月1日~12月31日 | (名義なし) | 記載なし | 記載あり |
名寄帳はその年の1月1日現在の所有者について、その年の4月1日以降に発行される書類であり、基準が「年」ではなく、「年度」になっている書類です。
上記の表で2022年1月1日~3月31日に不動産を購入していた場合、購入したのは「2022年」ですが、4月1日からスタートする「2022年度」の名寄帳にはその情報が記載されません。
記載されるのは「2023年度」からになります。
よくある認識ミスについて
上記の例で、2022年1月1日~3月31日に不動産を購入していた場合、2023年度(2023年4月1日以降)からでないと不動産の情報が分からないのでしょうか?
その通りです。
2022年度時点の名寄帳においては、購入した不動産は前の名義人のものとして登録されています。
この時点で名寄帳を取得しようとしても、全く他人の名寄帳を発行することになってしまうため、その請求に市町村役場は応じません。
その場合の手立てですが、不動産を購入した場合は登記を申請していますので、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を交付してもらいます。
その上で市町村役場に評価証明書の発行請求をすることで、不動産の情報を入手することができます。
名寄帳は名義がある物件が一覧となって記載されるのに対し、評価証明書は個別に物件を指定して発行することができるため、上記の対応をすることが可能です。
毎年1月~3月の間に不動産を購入した場合でもこのように情報を取得することができるので、情報が取得出来ないという状態になることはありません。
不動産の所在地の市区町村ごとに取得する必要がある
名寄帳に記載される物件は市町村ごとになっています。
不動産がある場所が複数の市町村であれば、それぞれの市町村に請求することになります。
名寄帳の名称は役所ごとで異なる
名寄帳の呼び名は市町村によって異なります。
主に固定資産課税台帳、土地・家屋名寄帳、名寄帳兼課税台帳といった名前がありますが記載される内容に違いはありません。
名寄帳を取得できない自治体がある
名寄帳が課税台帳を兼ねている自治体もあるため、名寄帳そのものがない自治体もあります。
その場合は課税明細書の再交付を受けてください。
ただし、課税明細書で交付を受けた場合は固定資産税が非課税となる道路や墓地を所有していたとしても記載が入らないため調査漏れを起こすリスクが生じます。
未登記または非課税でも名寄帳には記載される
毎年所有者宛に送られてくる課税明細書には未登記不動産や、道路・墓地といった固定資産税が非課税となっている物件については記載がされません。
名寄帳であれば固定資産税の課税有無に関わらず、亡くなった方が所有、共有していた物件全てについて記載されます。
また、固定資産税は登記がされているかいないかに関わらず不動産所有者に対して課税される税金であり、課税されていれば名寄帳に記載されます。
その結果未登記不動産を発見することもできます。
不動産確認|名寄帳の取得方法
名寄帳は不動産がある市町村の資産税課または税務課で取得することができます。
取得するための必要書類や要件について見ていきましょう。
名寄帳を取得出来る人
相続で名寄帳を取得する場合は所有者(納税義務者)の相続人、または委任を受けた代理人となります。
名寄帳の取得に必要な書類
所有者の相続人が取得する場合
- 所有者の死亡が記載されている除籍謄本
- 所有者と相続人の関係が分かる戸籍謄本
- 相続人自身の身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)
※同じ戸籍に両方の情報が記載されていれば1通で足ります。
相続人から委任を受けた代理人が申請する場合
- 相続人から代理人への委任状(相続人が署名、押印したもの)
- 所有者の死亡が記載されている除籍謄本
- 所有者と相続人の関係が分かる戸籍謄本
- 代理人の身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)
※同じ戸籍に両方の情報が記載されていれば1通で足ります。
名寄帳の申請に必要な手数料
1通200~300円の市町村が多いですが、中には無料もしくはコピー代(1枚あたり10円)のみ徴収している所もあります。
詳しくは各市町村のホームページでも確認できます。
また、1人名義で所有している物件と複数名義で共有している物件では、別々の名寄帳が発行されるため、その分手数料も増えます。
不動産の数が多い方はご注意ください。
名寄せ帳の申請先・申請方法
申請先
不動産(物件)がある市町村役場の資産税課もしくは税務課に申請します。
役場によって取り扱う部署名が異なっていることも多いので、不明な場合は固定資産税を取り扱っている部署、または名寄帳を取り扱っている部署に案内してもらいましょう。
申請方法
市町村役場の窓口で直接申請する方法と郵送で取り寄せる方法があります。
窓口で申請するには先の項目で記載しました必要書類を準備の上、名寄帳申請書に所有者の住所氏名、窓口に来た人の住所氏名等必要事項を記載の上提出します。
この時、「所有物件と共有物件いずれも交付してください」という希望を必ず申請書に記載してください。
1人名義の不動産と複数人で共有している不動産では、役所で登録名が異なっている場合があるため、全ての物件について交付してもらえるよう要望しましょう。
郵送で取り寄せる場合
市町村役場のホームページから名寄帳申請書(固定資産税証明申請書など市町村によって名前は違います)を印刷し、所有者の住所氏名、申請者(相続人)の住所氏名連絡先など必要事項を記入の上、以下の書類を封入の上郵送します。
- 名寄帳申請書
- 所有者の死亡が記載されている除籍謄本のコピー
- 所有者と相続人の関係が分かる戸籍謄本のコピー
- 相続人自身の身分証明書のコピー(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 返信用封筒(切手を貼ってください)
- 定額小為替(郵便局で手数料の金額分購入してください)
- (代理人が申請する場合は)相続人が署名押印した委任状、代理人の身分証明書のコピー
※同じ戸籍に両方の情報が記載されていれば1通で足ります。
窓口で申請する場合と同様に申請書中に所有・共有する全ての物件について交付してほしい旨を必ず記載しましょう。
また、申請書には日中連絡が取れる電話番号も記載してください。
手数料が不足している場合連絡が入ることもあり、その場合は不足料金分の定額小為替を追加で送付します。
東京23区内、一部の政令指定都市(大阪市、さいたま市など)に不動産を所有されている方の場合
東京23区内に不動産を所有されている方の場合、名寄帳の申請先が都税事務所となります。
不動産がある場所毎に都税事務所の管轄が異なりますので、直接窓口に行く場合は事前に管轄を確認してください。
郵送で名寄帳を請求する場合は、不動産の場所を問わず都税証明郵送受付センター宛てに送付してください。
必要書類は前記の郵送で取り寄せる場合と同様です。
なお、都税証明郵送受付センターに郵送申請する場合、一点注意すべき点があります。
所有・共有している全ての物件について交付依頼を行っても共有物件について交付されないことがあります。
こうした事態を防ぐために、事前に共有物件の有無を相続人の手元にある権利証や納税通知書等で調査してから申請するようにしましょう。
また、一部の政令指定都市(大阪市やさいたま市)については、市税事務所または郵送受付センターが名寄帳の郵送申請を受け付けております。
相続の財産調査は司法書士へ依頼!
名寄帳は不動産相続において、相続する物件を特定できる非常に重要な書類です。
ところがその調査・取得する過程において共有物件の取得漏れや記載内容のチェックが疎かになった結果、相続登記漏れを引き起こす可能性もあります。
司法書士にご依頼をいただければ、各市区町村役場への名寄帳の申請交付、それを元にした登記物件の調査を漏れなく一括して行うことが可能です。
名寄帳の取得は不動産相続登記の第1歩であり非常に大切な手続きです。
是非不動産登記のスペシャリストである司法書士にお任せください。