相続時の生命保険(死亡保険金)の請求手続き|税金はかかるの?
相続が発生すると、相続財産について調査する必要があります。
被相続人が残す大きな金額のものは、土地や建物、預貯金などのほかに、生命保険金(死亡保険金)がありますが、この生命保険金(死亡保険金)の相続時の扱いはどのようになっているのでしょうか。
相続財産になるのか、税金の関係でどのような扱いがされるのか。
今回は、相続時の生命保険金の扱いについてみていきましょう。
相続時の生命保険金(死亡保険金)に関する基本情報
まず、生命保険金(死亡保険金)の受取人はだれになるかを確認しましょう。
生命保険金の受取人について
受取人の指定がある場合
生命保険契約をする際には、自身が死亡した際の受取人を指定しなければなりません。
この指定受取人が保険会社に生命保険金の請求をし、死亡保険金を受領します。
この指定受取人が取得する権利は「自己固有の権利」となります。
すなわち、相続財産として被相続人から承継するということではありませんから、相続財産にはなりません。
例えば、不動産1,000万円、株800万円、生命保険金2,000万円(指定受取人:妻)となっている場合、相続財産は1,800万円です。
受取人の指定がない場合
被相続人が生命保険契約で受取人を指定していなかった場合は、法定相続人が受取人となり、法定相続人それぞれが均等割合によって受け取ることになります。
受取人が被相続人より先に亡くなった場合
また、契約当初、夫が妻を指定受取人としていたものの、夫より先に死亡して指定受取人を新たに指定していなかった場合には「指定受取人の法定相続人が受取人」となります。
よって、妻の法定相続人が均等割合により受け取ることになります。
被相続人が自分自身を受取人としていた場合
被相続人が契約時に自分自身を指定受取人としていた場合には、死亡時には被相続人自身の財産となりますから、生命保険金は相続財産となります。
この場合も生命保険金が相続財産として扱われる例外となります。
このように、特別なケースを除いて原則として生命保険金は相続財産にはなりません。
生命保険の請求期限
保険事故発生日(死亡の日)の翌日から数えて3年以内(簡易保険については5年以内)が請求期限です。
この期間は民法上の消滅時効に該当します。
しかし、消滅時効は3年を経過するとただちに請求する権利を失ってしまうわけではなく、保険会社が契約者や保険受取人に対して時効の権利を使用します、という意思表示を行うことで消滅します。
一般的には保険会社からの時効援用の意思表示が積極的になされることは少ないようです。
生命保険金は相続財産の対象になるの?
生命保険金は、妻が受け取る妻個人の財産となります。
遺産分割協議をする場合には、原則として生命保険金は遺産分割協議の対象とはなりません。
ただ、過去の裁判例では、保険金の額が他の相続財産と比較して高額の場合や被相続人との同居の有無、介護等の生前の貢献度を考慮して他の相続人との間に著しい不公平が生じるような特別の事情がある場合には、特別受益に準じて持ち戻して遺産分割の対象となる余地があるとしています。
特別受益とは、相続財産以外にもらいすぎている財産がすでにある場合には、相続財産としていったん戻して計算しなおす、というもので生前贈与などがその典型となっています。
それに準じて、いったん相続財産に入れて計算しなおしそれを遺産分割の対象にしましょう、ということです。
この場合、生命保険金が相続財産となる例外となります。
生命保険金の請求時に税金はかかるの?
ここで生命保険金と税金についてみていこうと思います。
税金がかからない生命保険金とは
生命保険のうち、税金がかからない生命保険金は以下の種類になっています。
- 入院給付金
- 手術給付金
- 就業不能給付金
これらの保険金が支給される目的は、予期せぬ事情により支出されたものを経済的に補填することを目的としています。
ですから、これらに税金がかかってしまうのでは本来の保険契約の目的が達成できないため非課税となっています。
税金がかかる生命保険金とは
一方で下記の種類の保険金については税金がかかります。
- 死亡保険金
- 解約返戻金
- 満期保険金
保険契約には、次の3者が関わります。
- ①被保険者(保険の対象者)
- ②契約者(保険料の負担者)
- ③受取人
です。
死亡保険については、これらがそれぞれ誰かによって、「相続税」「所得税」「贈与税」のいずれかが課税されます。
解約返戻金・満期保険金については、「所得税」「贈与税」のいずれかが課税されます。
かんたんに説明しますと、
①
- 1.自分を保険対象として自分が保険料を支払って、相続人が受け取る
- 2.相続税の対象になる
- 3.自分が死亡後に相続人の生活が困らないように自分の財産を掛け金として支出しているから
②
- 1.自分を保険対象として自分が保険料を支払って、自分が生前に受け取る
- 2.所得税の対象になる
- 3.自分が支出したものの利益を自分が受けることになるから
③
- 1.Aを保険対象としてBが保険料を支払って、Bが生前に受け取る
- 2.所得税の対象となる
- 3.→自分が支出したものの利益を自分が受けることになるから
④
- 1.Aを保険対象としてBが保険料を支払って、Cが受け取る
- 2.贈与税の対象となる
- 3.Bが自分以外のAのために支出した財産の利益をその他の者Cが受け取っているので、BからCへの財産の譲り渡しとみることができるから
その他のケースも含めて、国税庁が表にまとめていますので、ご紹介しておきます。
なお、相続税の対象となる場合には、死亡保険金が残された相続人のその後の生活を送りやすくする目的があるため、非課税枠が大きく設けられています。
このため、土地や建物、その他の財産総額を考慮に入れて節税対策としても効果があります。
- 非課税枠:500万円×法定相続人の数(相続放棄した者の数も含む)
死亡保険金から上記で算出した額を控除することができます。
たとえば法定相続人が4人いる場合には2,000万円までが非課税となります。
ここで相続税の対象となるケースを説明しましたが、上で解説しました「原則として生命保険金は相続財産とはならない」こととは矛盾していません。
税務上、相続税の対象となるだけであり、相続財産自体になるわけではありません。
これを「みなし相続財産」といいます。
本来は相続財産ではないが、税務上は相続財産とみなします、という意味で使われます。
相続放棄をしていても死亡保険金は受け取ることが可能
生命保険金(死亡保険金)は、受取人の自己固有の権利として請求できるため、相続放棄は生命保険金(死亡保険金)の受け取りに影響を与えません。
ただし、相続放棄した人が指定受取人になっている場合には、相続税の非課税枠が利用できないことに注意です。
生命保険金(死亡保険金)請求の手続きの流れ
ここでは具体的な保険金請求の手続き的な流れを確認しましょう。
①保険会社に連絡する
保険契約の対象者(被保険者)が死亡したら、受取人に指定された人はできるだけ速やかに保険会社に連絡をします。
その際に伝える事項としてあらかじめ確認しておく情報は以下のとおりです。
- 被保険者の氏名
- 保険証券番号
- 死亡日・死亡原因
- 連絡した人の氏名および被保険者との関係
- 死亡前の入院や手術の有無
仮に、受取人が指定されておらず、法定相続人が受取人になる場合には、均等割合での請求権を持ちます。
一般的には相続人代表者が請求するのではなく、法定相続人それぞれが請求することになります。
ただし、指定受取人が先に死亡しているために指定受取人の法定相続人が受け取る場合には相続人代表者からの請求でもよいとしている保険会社もあるかと思います。
②手続き書類の受け取り
保険会社から手続きに必要な保険金請求書等の書類が届きます。
③保険会社へ必要書類の提出
送られてきた書類に必要事項を記入し、一般的には下記の書類をそろえます。
必要書類
- 保険証券
- 死亡診断書
- 被保険者の死亡のわかる戸籍謄本
- 受取人の印鑑証明書(発行後3か月以内のもの)
- 受取人の本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
必要な書類がそろったら、不備のないことを確認し保険会社に郵送します。
④死亡保険金の受け取り
保険会社に上記の請求書および必要書類が到着してから、書類を精査し保険約款で規定された期限に保険金の支払いがされます(例えば、書類が到着した日の翌日から10営業日以内など)。
保険会社で特別な事情の確認や照会が必要な場合には、支払いまでにそれ以上の日数を要することがあります。
保険金の受け取り方法としては、一括で受け取る方法のほかに年金として受け取るための原資とする方法や据え置きにして保険会社に預けたまま運用する方法などがありますので、契約している保険会社に確認しておかれるとよいかと思います。
司法書士に代行依頼した際の料金
生命保険の請求は受取人ご自身でもできますが、司法書士などの法律専門家に依頼するとスムーズです。
相場としては、1請求あたり5万円~10万円と報酬設定をしていることが多いかと思います。
一般的には、書類を的確かつ迅速にそろえる作業は煩雑であり、大切な方を失った後の状態では専門家に任せてしまうのも大きなメリットがあるといえます。
ネクストリーガル | 5万円 |
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まとめ
今回は、相続と生命保険を中心に解説してきました。
実際に生命保険金の請求が発生した場合に備えておくことが大事です。
たとえば、受取人が死亡したのに受取人の変更をしていないなどがないように確認しておくことや受取人と税金の関係などは事前に問題がないかを確認しておくとよいでしょう。