山林相続の必要性は?3つの手続き方法や相続のメリット・デメリットを解説
山、林、森といった山林も立派な土地ですが、地元に代々根付いている一家で自分自身がこうした山林を両親や祖父母から相続して所有者になっていることを認識しづらい一面も持っています。
こうした山林の相続手続きが結果的に放置されてきた結果、登記簿謄本上の所有者が祖父母、曾祖父母のままとなり相続人調査や遺産分割協議が困難となるケースもあります。
山林の相続手続きも他の不動産と同じように逐一進めていく必要があります。
山林の相続は必要なの?
山林も一般の土地、建物と同じように登記されている不動産であり、相続登記を行う必要があります。
しかし、一方で自宅や賃貸物件とは異なり、亡くなった方が山林を相続しているかを把握するのが難しいこともあります。
こうした山林が相続財産に含まれているかを確認するには以下の方法があります。
- 自宅や貸金庫で権利証や固定資産税課税明細書を検索する
- 市町村役場に名寄帳の交付を請求する
- 名寄帳の記載を元に法務局で登記事項証明書を取得する
といった方法が考えられます。
山間部の山林の場合、複数人名義で山林を共有しているケースもあり、必ず所有・共有物件の全てについて交付してもらうようにしましょう。
亡くなった方の名義になっているかどうかは法務局で登記事項証明書をチェックして確認を行います。
ここまで確認できたら他の不動産と同じく相続手続きを始めていきます。
山林を相続する時の3つの手続き
山林の相続では主に3つの相続手続きを進めていきます。
①山林の名義変更(相続登記)
相続登記を申請し、山林を相続人名義に変更します。
登記のためには以下の書類を準備の上申請します。
- 亡くなった方の出生~死亡までの戸籍謄本
- 亡くなった方の住民票除票
- 相続人全員の現在戸籍謄本
- 山林を相続する方の住民票
- 山林の評価証明書 (遺産分割協議で相続する方を決めた場合)
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名、実印押印があるもの)
- 相続人全員の印鑑証明書
②市区町村への届出
山林を相続した後、相続が発生してから90日以内に山林がある市町村役場に届出を行わなければなりません。
90日以内にこの届出を行わなかった場合、10万円以下の過料が課せられることもあり、注意が必要です。
必要書類としては所有者届出書のほか、以下の書類が必要です。
- 登記事項証明書
- 土地の位置を示す図面
- 相続によって権利を取得したことがわかる書面(戸籍謄本)
土地の位置を示す図面としては法務局で発行される公図や地積測量図が挙げられます。
なお、遺産分割協議が整っていない、または時間を要する場合は先に役場の担当部署に相談し、手続きを速やかに進めるようにしましょう。
③森林組合へ相続の相談
山林の管理・活用を個人で行うのは大変な労力となります。
山林を相続したら最寄りの森林組合に相談するようにしましょう。
森林組合は国の補助金で一定規模の森林について整備を行なっています。
各都道府県毎に連合会が置かれていますので、不動産がある都道府県の森林組合に連絡してください。
また、管理を任せたい、売却したいという希望があれば森林組合が買主や借り手を探してくれることもあります。
亡くなった方が既に森林組合に加入している場合は名義変更を行うことになります。
山林の相続手続きをせず放置した場合のリスク
山林はどうしても自宅や賃貸物件と違い、相続手続きが疎かになりがちな土地です。
調査によって山林が相続財産であることが分かっても、結局引き受けする相続人が決まらないなどの理由で手続きが放置されてしまうことも起こり得る土地です。
しかし、長期間にわたり手続きを放置すると以下のリスクが生じる恐れがあります。
代襲相続の発生により手続きが困難となる
相続する権利のある子供が亡くなった場合、更にその子供(孫)に相続する権利が移る仕組みを代襲相続と言います。
この代襲相続は、相続が起こってから時間が経てば経つほど起こる可能性が高くなります。
その結果として相続人が多くなり、相続関係が複雑化すると遺産分割協議もまとまらずに手続きが滞る恐れがあります。
固定資産税の納税義務も長期化する
固定資産税は毎年1月1日現在の所有者に対して課税されます。
相続手続きをせず売却処分も行わなかった場合、毎年固定資産税を納付しなければなりません。
いずれの場合も長期間にわたり放置した場合に起こり得る話です。
山林相続の手続きを放置して良いことは決してありません。
山林を相続するメリット・デメリット
山林を相続で引き継いだ方にはどんなメリット、デメリットがあるのかを見ていきます。
山林相続のメリット
他人に山林を貸出し、活用ができる
主に自治体や林業関係企業、キノコ採りを営む事業者などに山林を貸し出して収益を上げることができます。
自治体の中には賃貸物件を公募しているところもあります。
興味がある方は地元の自治体に相談することを検討しても良いでしょう。
林業を行う
生えている樹木を伐採して売ることで収益を上げることが考えられます。
杉やヒノキなど需要の多い木が生えている土地であれば検討しても良いかもしれません。
自分自身で林業を行わなくとも、労働者を雇い入れて事業化しても構いません。
ただし、重機が入って伐採しやすい土地であるかなど費用対効果を見極める必要があります。
レクリエーションの場として活用
近年ではソロキャンプをはじめとしたアウトドアキャンプ、サバイバルゲームなどが人気で週末になると都市部近郊のキャンプ場などに大勢のお客さんが訪れます。
土地の広さや形状、交通アクセスなどが適していればこうした事業を展開することもできます。
太陽光発電設備の設置
日当たりの良さ(南側斜面)、日照時間が長い、設置する場所の広さなどの条件をクリアする必要があります。
また、初期投資費用が額となるためある程度事業資金を確保できている方でなければ事業化するのは難しいかもしれません。
山林相続のデメリット
山林の管理は難しい
山林の管理は肉体的に大きな労力を要する作業となります。
下草の刈り取りや間伐、作業用通路の整備など大きな負担がかかります。
こうした管理を業者に委託することもできますが、管理コストが毎年かかり金銭面でも負担となる恐れがあります。
山林の売却が難しい
山林は市街地にある宅地などに比べ、買い手が見つかりにくい土地です。
買い手が見つからないまま年月が経過しますと管理費用や固定資産税など出費が重なり、相続人の負担が増える要因となります。
次の相続で負担をかける可能性がある
山林を売りに出したものの売却が決まらず、所有者自身が亡くなってしまった場合、次の世代に管理費用や固定資産税などが毎年発生する「負の遺産」となり、次世代にも負担をかけ続けることになってしまいかねません。
山林を相続すべきかどうか判断基準について
大きなポイントとしては、収益化できる土地であるか?、売却しやすい土地であるか?
の2点となります。
収益化の観点から言えば、山林賃貸が可能か、山菜やキノコといった観光資源があるか、レクリエーション施設転用が可能か、という目線が考えられます。
もう1点の売却しやすい土地であるかどうかは、山林がある場所が交通上アクセスしやすい場所であるか、宅地などに造成しやすい形状であるかなどの利用価値が考慮されます。
こうした観点を判断基準として相続するかどうかを決定しましょう。
山林を相続したくない場合の相続放棄について
山林は、一度相続してしまうと管理費用等で相続人に大きな負担がかかるため、相続したくないと考える方もおられます。
そういった場合に取られる方法が相続放棄です。
相続放棄を行うことで山林の名義人となることは防げますが、他の財産を受け取る権利も消滅してしまうことには注意してください。
この相続放棄は相続が発生したことを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に対して申立を行わなければなりません。
しかし相続放棄申立のためには、亡くなった方の除籍謄本等必要な書類があるほか、申立は1度しか認められていません。
万が一、不備が生じた場合相続放棄が認められない事態となりかねません。
相続人自身でこの手続きを行うことは必要書類の手配含め簡単なものではないと言えます。
1度きりしかない相続放棄の申立を確実に認めてもらうには、是非司法書士を頼ってください。
司法書士に依頼することで記載に不備のない申請書を始め、必要な書類の確実な手配と家庭裁判所への申立を行うことができます。
相続の手続きに困っているならネクストリーガルへ
山林相続にお困りの相続人の皆様はぜひ、ネクストリーガルへご相談ください。
ネクストリーガルでは山林の相続手続き、山林を相続したくない方の相続放棄の手続きのいずれもご依頼を承ることもできます。
また、相続の手続きをただ行うだけではなく、その後の税金対策にも強い税理士を紹介することができます。
相続した財産のアフターフォローまでをしっかりと対応致します。
まとめ
山林は馴染みの無い土地であるがゆえに、相続手続きが放置されてしまいやすい側面があります。
しかしこれまで見てきました通り、山林も亡くなった方の財産として手続きを行わなければ相続人自身や次の世代に負の遺産として引き継がれてしまいかねません。
しかし、相続人や不動産の調査はもちろんのこと、不動産登記の専門家である司法書士であれば山林の相続手続きも確実に行うことができます。
こうした山林の相続手続きは是非司法書士にお任せください。